「生物から生命へ」(有田 隆也)

「生物から生命へ―共進化で読みとく」(有田 隆也:ちくま新書)を読み終えた。
この本のテーマは、相互作用による共進化。非常に示唆に富むものであった。
フィードバックループ。つまり、「環境による自然選択」だけではなく、生物も環境を変える。いや、環境じたいが、進化する生物の集合だったりする。
従来の、環境を所与のものとして考えるやり方は、天体の運動を二体問題として解くとうまくいく(というか、そうしないとうまく解けない)ようなものだろう。
しかし、コンピュータでシミュレーションを行えるようになったことで、状況が変わってきている。
人類においては、「文化的原理」というものが新たに加わり、さらにその変化速度が大きくなっている、というのが筆者の問題意識であると思われる。
文化の進化というのは、生物学的進化とは別の階層の現象なんだよね。宇宙の進化や物質の進化とは別の階そうであるというのと同じ意味で。
筆者は、とても頭のいい人だと感じる。もちろん、こういう本を書くからには頭が悪いわけがないのだが、学問を究める頭の良さとはまた別の知性を感じる。うまく説明できないのだが。
そして、ここでも出てきましたよ、ティンバーゲン!最近読んだ2冊に続けて登場したおいうことは、最近になって評価されてきた考え方だということなのかな。